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トップ主張・提言  :  「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」にかかる全労働の考え方
 

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労働者派遣制度見直しの基本的視点について

労働保険審査制度の見直しに関する考え方(第1次)

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「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」に関する全労働の考え方(提言)

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◆「民間労働力需給制度部会報告」の問題点について(声明)(2002/12/27)

◆「雇用保険部会報告書」の問題点について(見解)(2002/12/27)

◆ 「今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)」の問題点について(2002/12/10)

◆「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」にかかる全労働の考え方(2002/5/13)

◆有期雇用契約(3年以内)及び裁量労働制(専門業務型)の拡大を求める労働政策審議会答申の取り扱いにかかる意見(2002/1/29)

◆「公務員制度改革大綱」にかかる全労働の考え方(2002/1/9)

◆今、求められる雇用対策の提言(2001/11/5)

◆「公務員制度の基本設計」に対する全労働の考え方(2001/7/16)

 

 

「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」にかかる全労働の考え方

内閣府の行革推進事務局(以下、事務局)は、4月25日、「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」(以下、2次原案)をとりまとめ、各府省及び国公労連等に提示した。
2次原案の最大の特徴は、「改革」をうたいながら、後に詳述するとおり、逆に、現行人事制度の矛盾点、問題点を固定化(現行の1種採用者の特権人事の固定化等)あるいは拡大化(能力等級制度による中央優遇の拡大化等)させる側面を強く持っており、全体を通じて、受け入れ難いものとなっている。
また、労働条件決定における人事管理権者の権限を随所で強化する一方で、「大綱」が「(労働基本権について)現行の制約を維持する」としたことに伴い、「相応の措置を確保する」としたことの具体化に一切言及していないことは、雇用と労働条件を脅かす一方的かつ重大な制度変更と言える。
このほか、2次原案は、事務局が昨年11月6日に提示した「行政職に関する新人事制度の原案」(以下、1次原案)を基本的に踏襲したものであり、1次原案について全労働が指摘した問題点の多くが残されている(昨年11月12日付「行政職に関する新人事制度の原案にかかる全労働の考え方」(以下、1次原案にかかる考え方)を参照)。
今後、事務局は2次原案をもとに関係者と意見交換をすすめ、新人事制度の内容を更に検討(法制面の検討を含む)するとしているが、ここで言う「意見交換」を「意見を聞く程度のもの」に止めてはならず、ILO第87号条約等の公務における労働条件決定の国際ルールに基づき、使用者として関係労働組合と合意をはかる立場に立つべきである。
その上で、この間、再三にわたって指摘してきた、労働条件と行政運営に関する重大な問題点の解決をはかるよう強く求める。
以下、2次原案の主な項目に即して、「1次原案にかかる考え方」との重複をなるべく避けながら、その主要な問題点を指摘する。

1 能力等級制度

能力等級表

2次原案は、「新人事制度の基礎となるものとして、職務遂行能力に応じて職員を等級に格付ける能力等級制度を設け」るとし、同制度の運用の基準となる「能力等級表」(組織区分ごとに基本職位、代表職位及び能力基準を示す表と、組織区分ごと、等級ごとに能力基準(職務遂行能力基準)を示す表から構成)を定めるとする。
その上で、組織区分を、A(本府省)、B(管区機関等)、C(府県単位機関等)、D(地方出先機関等)の4つに分類し、「組織区分別の基本職位、代表職位及びこれらに対応する等級を定める表(イメージ)」によって、同種の役職であっても、本府省から地方出先機関等へ行くに従って、求められる能力基準は低いものであることを示している。他方、ここで言う「能力とは職員が職務(官職)を通じて現に発揮している職務遂行能力のことであ(る)」とするのであるから、地方出先機関等で働く職員にとっては、如何に自己の能力を高めたとしても、「職務(官職)を通じた能力の発揮がない」として処遇しないことに等しい。つまり、第一線で働く職員にとって、当該制度は処遇を抑えつける「道具」にほかならず、この点で現在の級別標準職務表を中心とする「等級制度」と変わるところがない。
本来、各行政分野に如何なる行政組織(段階)が相応しいかは、当該行政の目的や役割に応じて決すべきあり、それを能力等級の基準とすること自体、不合理である。一例を挙げるならば、労働基準行政における司法警察事務(捜査)は、基本的に第一線(地方出先機関)の事務であるが、これに従事する職員が研鑽を積み、困難な捜査に挑むための能力を高めたとしても、組織区分を基準に判断する限り、最も低い職務遂行能力とみなされるのである。
2次原案は、このように第一線の事務等について、本来如何なる職務遂行能力が求められるかの十分な検討を放棄し、専ら組織区分に拘泥した姿勢ばかりが目立ち、まさに「中央優遇」のお手盛りと言える。
なお、「組織分類の基準に盛り込む内容(イメージ)」では、組織区分への分類にあたり、管轄区域によって画一的にとらえるのではなく、事業規模の大きさや業務内容の困難性等を考慮した実質的な判断を認める余地があることを示しているものの、実際の運用にあたって、労働行政の第一線が担う業務内容の困難性や特殊性が如何に評価されるのかが課題となる。

人員枠

2次原案では、能力等級の等級ごとの人員数を「人員枠」の設定・改定については、各府省からの要求を踏まえて内閣が人件費予算と一体で定めるとし、人事院はこれに意見の申し出をすることとなっている。
従来、級別定数の設定・改定は俸給表の改定と並んで、労働条件の根幹をなすもので、人事院の「代償機能」が発揮される具体的な内容の一つであった。その機能が使用者たる内閣(政府)に委ねられるのであるなら、使用者(政府)の一方的な意図(例えば、人件費抑制)が貫かれることのないよう、労働基本権の回復は不可欠となる。

2 新任用制度と本府省幹部候補職員集中育成制度

2次原案は、「採用試験区分や採用年次等に基づく画一的、硬直的な人事管理が一般的に見られ(る)」などとしているが、この場合、現行の制度が問題なのか、運用が問題なのかの十分な検証を避けている。
そして、「1種採用職員」及び「1種採用職員以外の職員のうち、あらかじめ定める基準により、人事管理権者が適性審査を経て選考した職員」を対象とする本府省幹部候補職員集中育成制度をつくり、その内容として特別の育成プログラムや特例的な任用制度(能力評価によって格付けられた能力等級よりも上位の基本職位に分類される職務に就かせること)等を設けるとするが、要するに、現在ある1種採用職員の「特権人事」の制度化でしかない。
なお、職員の採用に関して、「労働基準法の試用期間の規定との均衡、実際に勤務させることなしに能力基準を検証することには限界があること等にかんがみ、原則として採用後6月を条件付採用期間とし、採用後6月経過時に特別の能力評価を行い、正規採用するか、降格・免職とするかを決定する」としているが、労働基準法の「試の使用期間」の規定(21条)と如何なる関係があるのか全く不明である上、試用期間経過後の解雇にかかる判例法理を全く無視したもので理解に苦しむ。


3 免職・降格の基準・手続

2次原案は、免職の基準である「勤務実績不良」の該当性及び新たに降格の基準に加えた「職務遂行能力欠如」の該当性の判断において、「能力評価」あるいは「業績評価」の結果を用いるとしているが、後述のように両評価制度ともに、評価者の恣意的な判断を排除し得ず、「情実」が深く入り込む可能性が高い。また、新たに免職の基準に盛り込んだ「適格性欠如」の該当性については、「日常の言動等」から判断することとしており、「もの言えぬ、威圧的な職場」をつくるもので「基準」として不適当である。
これらの措置は、職員の雇用と労働条件を脅かす重大な制度変更であり、「能力評価」あるいは「業績評価」を口実にして、メリットシステムの根幹である「身分保障」をなし崩しにしかねない。
処分の現状をみるならば、人事管理権者のきわめて広い裁量の下で、恣意的な運用がまかり通っていることが最大の問題なのであって、現行制度の適切かつ公正な運用を追求することこそが先決である。

4 新給与制度

基本給

2次原案は、基本給の加算部分について、「相応の幅を設け」るとする一方で、「これにより各級間の水準の重なりが生じるが、同時に年功的な要素を抑制する等の観点を踏まえ、現行俸給表よりも水準を抑制する」、また「標準的な加算の場合であっても、当初は加算される額が大きく、その後は加算される額が小さくなるように設定する」としている。
こうした措置は、組織区分を基本に設計された「能力等級表」の下、いわゆる「昇格頭打ち」の矛盾から抜け出すことのできない地方出先機関等の職員を高位号俸に追いやりながら、これまで以上の賃金抑制を強いることになる。つまり、本府省の職員と地方出先機関等の職員との賃金格差をさらに広げることを意味している。
基本給の加算は、「職員が勤務を継続していく中で業績評価の結果等に表れた職員の職務遂行能力の発揮状況等を総合的に勘案して」行うものとされているが、評価結果に基づいて、「標準×2」「標準×1・5」「標準」「標準×1/2」「ゼロ」の5段階程度の幅で格差をつけるとしている。
職員個々を対象とした「業績評価」は「絶対評価」であるとしながら、「標準×2」及び「標準×1・5」の適用枠を15%と定めている以上、結局のところ、「相対評価」を下すことになるのであって、多様な事務の担当者が連携し組織的に運営する行政分野には適さない。これを無理矢理に行うことになれば、評価者の「総合判断」を口実に「情実」が入り込む余地を排除できず、職場のチームワークはズタズタになりかねない。
また、「基本給の加算は、原則として年1回、特定の時期に行うこととする」としているが、現行のA種採用者のいわゆる「3短措置」(初回昇給時期の3ヶ月短縮)や育児休業取得者等の復帰時の「昇給月の調整」との整理、あるいは年度中途で採用した職員の昇給月の在り方の整理等が必要となる。

職責手当

2次原案は、職責手当を「管理・監督の地位に伴う職責の特殊性や職務遂行形態の特殊性」を給与上評価したものと位置づけ、「現行の特別調整額よりも水準的に拡充する」としているが、このことは職責手当の適用官職と非適用官職の給与格差をさらに広げることを意味する。2次原案でも、業績手当に関して、「職責手当の適用官職から非適用官職へ異動した場合に支給額が減額となる」との問題意識を述べているが、このことは「管理・監督の地位にある職員」の処遇を偏重させていること自体の矛盾なのであり、中央、地方を問わず、これまで、効果的な人材活用(配置)や高度な専門性の養成を困難にしてきた制度的な要因である。いわゆるライン職の偏重をあらため、様々な官職にそれぞれ求められるの専門性や多様な能力に相応しく評価していく姿勢への転換が求められている。
また、2次原案は、「管理・監督の地位にある職員」について、「時間外の勤務について必ずしも時間計測になじまず、したがって、時間計測を基礎とする超過勤務手当の支給になじまない」とし、職責手当の支給対象者は、すなわち超過勤務手当を支給しない者であると結論づけている。
しかし、民間企業では、労働基準法41条に言う「管理監督者」(労働基準法32条、37条等の適用除外)以外の多くの従業員が職責手当類似の手当(役付手当、管理手当等)の支給を受けながら、時間外・休日労働手当の支給を受けている。また、労働基準法には、時間計測になじまない勤務に従事する者について、時間外労働時間をみなす規定(裁量労働、事業場外労働)はあるものの、これをもって時間外労働手当等を支払わなくても良いとする規定はなく、同法との均衡を著しく欠いている。また、本府省の課長補佐等(現行俸給表(行一)の8級クラス)について、後述の「特別の手当」と時間外労働手当の併給が予定される一方で、地方出先機関の大部分の課長(現行俸給(行一)表の57級クラス)が、厳格な時間管理を受けながら時間外労働手当の支給対象外とされていることはいかにもバランスを欠く。

本府省に勤務する課長補佐、係長等に対する特別の手当

2次原案は、本府省の課長補佐及び係長(同クラスの多くの専門官職を含むと想定される)を対象に「特別の手当」を設けるとし、その水準については、現在の本府省の課長補佐等に支給されている特別調整額の水準(8%)を「実質的にカバーし、さらにはこれを一定程度上回る水準を用意することについて検討する」としている。
本府省に蔓延する過酷な長時間労働(いわゆる過労死ラインを超えている)と超過勤務手当の不払いの実態は目に余るものがあり、これを是正・改善していくことは「改革」の最優先課題とならなければならない。その上で、「能力等級表」で求められ職務遂行能力を、組織区分上、最高位で評価する以上に、本府省で働く職員を処遇する必要があるというのであれば、給与財源は「一つのパイ」なのであるから、あわせて府県単位機関、地方出先機関等の多様な官職に求められる「特殊性」にも目を向け、相応しく評価し処遇する姿勢がなければならなず、「中央優遇」のための「改革」にしてはならない。

業績手当

2次原案は、業績手当の業績反映部分について、「業績評価」などに基づき「現行以上に勤務実績を支給割合(成績率)に適切に反映させる」としている。すなわち、従来にも増して、短期間の評価を給与に直接反映させるしくみを強化していくことが、公務における「能力向上や成果創出のインセンティブ」を高めるという発想が前面に打ち出されている。
しかしながら、後述するとおり「業績評価」は、給与への反映をはかる際に「相対評価」に還元されるのであるから、他の職員との「比較」においてインセンティブを刺激するにすぎない。つまり、民間企業のように「能力向上や成果創出」が事業全体の「利潤」の拡大に結びつき、もって給与総額の拡大をはかり得るのとは異なり、公務では、職員間の「足の引っ張り合い」を助長する懸念すらある。
また、日常的・短期的に「給与水準の上げ下げ」をちらつかせることで、インセンティブを高めるいう発想自体が、短絡的かつ安易なものである。こうした職場では、国民本意の行政の実現にむけた純粋な使命感と鋭い感性を持った多くの職員のモラール(士気)を低下させてしまうことになるだろう。
なお、「適切な上下配分を実現するため」として、業績手当の算定基礎額には「等級別に定める額を算定基礎に加える(上位の等級に高い割増を行う)」とし、また、業績反映部分の算定基礎額からは「基本給(加算部分)」を除外するとしているが、いずれの措置も「昇格頭打ち」を強いられ、高位号俸におかれた職員に圧倒的に不利となり、「中央優遇」と言える。

5 評価制度

2次原案は、「公正で納得性の高い評価システムを構築」するとし、「能力評価」と「業績評価」の具体化を図るとしている。いずれの評価制度も、「自己評価」を行った上で「面談」による評価を基本とした方式によるとし、こうした場合に一般に懸念される評価者の恣意的判断(情実)を排除する措置は、「引き続き検討する」と述べるに止まっている。
また、いずれの評価制度も「絶対評価」であるとしながら、基本給の加算額の決定(標準を超える適用枠は定率)や業績手当の業績反映部分の決定(成績率段階及び分布率は人事管理権者が予め設定)にあたっては、あくまでも「相対評価」に還元される仕組みとなっている。とするならば、チームワークを重視し、組織のパフォーマンスを最大限に発揮する姿勢は後退してしまい、個々の職員が「よく見せる技術」を競い合うことになる懸念が生じ、真の能力向上を妨げるおそれがある。
職員が、自ら所掌の事務を困難性を過度にアピールしたり、見せかけの実績づくり(数あわせなど)に腐心する事態が生じることは、国民不在の行政運営への変質をもたらすことを意味し、公務員が「全体の奉仕者」として働くことを困難なものとする。
すでに民間企業の多くが、目標管理制度(業績評価で新たに導入)の問題点(異なる評価者間の基準統一が困難、質が違う業務間の評価が困難など)を重く受け止め、同制度から脱却していることを直視し、公務に混乱をもたらす制度の導入を止めるべきである。
個々の職員に対する評価の基本は、複数の管理者が長期間の観察をもって行うべきであって、またその結果は、専ら任用(適材適所の配置)や人材育成に活用すべきである。


6 評価に関する苦情対応と救済制度

2次原案は、新たな「評価制度の公正性と納得性を担保するため」として、「各府省において、(評価に関する)職員の苦情に的確に対応する仕組みを整備する必要がある」としている。しかし、新たな評価制度は、いずれも評価者と被評価者との「密室のやりとり」で結論(評価結果)を導こうとするものであり、かつ、その基準は(多くの場合)抽象的なものとならざるを得ない以上、検証自体がきわめて困難となるという決定的な難点を持っている(言った、言わないの争いにまでなりかねない)のであり、評価制度自体をあらためることなくして、如何なる苦情処理システムも画餅となる。
また、評価に関する苦情対応を、公正な第三者機関でなく、あくまでも各府省に任せる仕組みを打ち出しているが、これでは各府省が組織的に行う「労務管理施策としての差別」などに全く実効性がない。さらに、苦情処理システムにおける「対等性」を確保する措置(労働組合の参画等)が欠落している点も重大である。
なお、2次原案は「(新人事制度全般を通じて)人事管理に関する様々な苦情に公正かつ迅速に対応する」必要を認め、その中で人事院の公平審査制度の充実を掲げている。その趣旨は理解できるところであるが、人事管理権者の限りなく広い裁量を認める現状の運用を抜本的に改善すること、迅速処理を可能にする体制を確立すること、公務における労使の著しい「非対等性」を是正する措置を講じることなどが実現しないなら、そもそも「救済制度」の名にも値しないと言うべきである。