2アンケート結果から見るサービス残業の実情
-臨検監督の中で監督官はサーピス残業を頻繁に見かけている-
全労働が行った「労働者アンケート」では「過去1ヶ月(直近の賃金支払期間)間に、時間外手当・休日手当が支払われなかった労働時間がありましたか」との問いに対して、「ある」との回答は32.5%に及び、労働者の概ね3分の1がサービス残業をしていたことを窺わせる。また「ある」と回答した者にその時間を尋ねたところ「10時間以内・32.8%」「1020時間・30.9%」「2030時間・15.3%」「3040時間・6.7%」「4050時間・3.2%」「50時間以上・9.5%」などとなっており、約7割が10時間以上のサービス残業をしていたことになり、約1割は「過労死」危険ラインである「45時間」を越える「50時間以上」のサービス残業をしていたことになる。
同じく全労働が行った「監督官アンケート」では「これまでの臨検監、督の中でサービス残業と考えられる事案がありましたか」(【注】参照)との問いに対して「よくある・31.3、%」「ときどきある・45.4%「たまに」ある・19.2%」「ない・1.3%」という回答が得られた(図1参照)。
ほとんどの監督官が臨検監督時にサービス残業にあたる事例に一定の頻度で遭遇していることが窺える。もとより臨検監督は労働条件上の問題を抱えると想定される事業場を対象とする場合が多いから、その点を割り引いたとしても、高い頻度でサービス残業を目にしているといえる。
なお、連合の「2002年連合生活アンケート」が、サービス残業に関する調査を行っている。これによると、概ね4人に1人が月の半分以上サービス残業をしていると回答しており、同様に高い比率でサービス残業が存在していることを示している。
「監督官アンケート」ではサービス残業の形態にも着目している。「サービス残業の『形態』でよくあると思うものは何ですか」(3つ以内)との問いに対して、「労働時間を把握していない・73.3%」「自己申告制の不適切な運用・72.7%「時間」外労働手当の定額制(足切り)・70.3%」「管理監督者の範囲の不適切な運用・60.9%」、「端数時間(分単位等)の切り捨て・30.2%「事業場外みなし労働制の不適切な運用・19.0%」「仮眠時間・手待ち時」間の不適切な運用時間・13.0%「年俸制の不適切な運用・11.5%」「裁量労働制の不適切」、な運用・9.3%」となっており「サービス残業」と一言で言っても、実に様々な形態があ、ることを示している(図2参照)。
【注】「監督官アンケート」にあたって、「サービス残業」は「時間外労働に対して必要な賃金が支払われないこと(但し、割増賃金の算定基礎の誤りを含まない)」と定義した。従って、近時、厚生労働省が用いている用語である「賃金不払残業」と同義である。
第3章 労働基準行政の取り組みと課題
-長時間労働やサービス残業を解消するための指針や通達が相次いで発出されている-
労働基準行政が、長時間労働やサービス残業の解消が重点課題と位置づけられていることは行政運営方針などからも明らかである。
近年では、長時間労働やサービス残業を抑止するための指針や通達が特に多く発出されている。その代表的なものとしては、
(a)平成11年2月17日基発第70号「今後における一般労働条件の確保・改善対策の推進に関する基本方針について」
(b)平成13年3月31日基発第280号「当面の労働時間対策の具体的推進について」
(c)平成13年4月6日基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」
(d)平成13年10月23日基発第928号「所定外労働削減要綱の改定について(所定外労働削」減要綱)
(e)平成14年2月12日基発第0212001号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」
などであるが、加えて、本年5月23日には「賃金不払残業総合対策要綱」と事業場にお、いてとりくむべき措置を明らかにした「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」が取りまとめられている。
これら通達のうち、(d)が所定外労働時間の削減のための基本的な考え方を示しており、(a)と(b)が監督指導の具体的な手法等を、さらに(c)と(e)が監督指導の具体的な基準等をそれぞれ示している。また、労働時間の短縮に向けた環境整備のための施策としては、時短促進法に基づく各種補助金制度等がある。これらの施策は、同法4条1項を根拠とする「労働時間短縮推進計画」(1992年10月9日・閣議決定、2001年8月3日改定)を具体化する形で行われている。
第4章 長時間労働・サービス残業を生み出す原因は何か
1長時間労働とサービス残業の関係
-サービス残業は、際限のない長時間労働を助長する重大な要因-
「長時間労働」は、一般に法定労働時間を超えた労働であることから、法定労働時間を超えた部分に対して割増賃金の支払いが必要となる。しかし現実には、その労働時間に相当する割増賃金が支払われていない場合がある。その中には「管理監督者の労働時間規、制の適用除外」「専門・企画業務型裁量労働時間制」等によって合法的に割増賃金の支払いを免れている場合もあるが、前述のとおり「サービス残業」となっている場合も少な、くない。
一方サービス残業とは一般に所定労働時間を超えて労働したにもかかわらずその超えた労働時間について所定の割増賃金あるいは賃金が支払われないことをさし、多くの場合、労働基準法37条(あるいは24条)違反となるが、必ずしも「長時間労働」とは限らない。
しかし後述するとおり、割増賃金制度は、使用者に対して一定の負担(割増賃金の支払いを課すことによって長時間労働を抑制する制度であるからこれを無視するなら「長時間時間」への抑制が働かないことになる。まして「サービス残業」は、時間外労働に対して割増部分のみならず一切の賃金を支払わないのであるから野放図な長時間労働を招来する可能性がきわめて高い。
要するに「サービス残業」は際限のない「長時間労働」を助長する重大な要因と位置、づけることができるだろう。こうした両者の関係に留意しながら、長時間労働、サービス残業を生み出す原因を、法制(行政運営を含む)上の要因と社会的な要因の両面から、さらに考える。